※当レビューは「Scoops RPG」ホームページにて掲載されたものです。
著者:Greg Stafford/翻訳:桂令夫 |
Chaosium社の『King of Sartar The Mystery of Argrath;How One Man Become a God』の翻訳である。
その内容は、ファンタジーRPG『ルーンクエスト』の背景世界「グローランサ」を題材に、グローランサの後世の学者グレッグ=スタフォード(つまり著者)研究書としての体裁の架空神話、年代記物である。これはゲームサプリメントではなく、『シルマリルの物語』のような創作神話年代記物、あるいは『鼻行類』のような架空研究書をグローランサでやった物である。
扱っているのは、代表的な舞台である英雄戦争期のサーター王国と英雄アーグラスに関する伝説とその周辺についてである。アーグラスのサガや様々な逸話、英雄戦争期前半の通史、ドラゴンパスに関するの各種文書や、オーランス人の文化と慣習と社会、オーランス人の主観によるグローランサ神話、歴史に関する研究等が掲載されている。ただし、いずれも後世の不確実な情報による研究というのが味噌である。現に相互に矛盾する情報も無数にある。そしてその情報量は圧倒的である。
翻訳も非常によくできているし、デザインも良好、ハードカバー仕様と草薙琢仁氏によるカバーアートも非常に格調高い。
しかし実の所、”ゲーム関連商品”としてはいびつ極まりない代物である。架空研究書としての完成度は極めて高いものの、それゆえにRPGサプリメントとしては極めて扱いづらい。また、グローランサに関する基礎知識が無い読者には理解困難だろうし、そもそも対象にすらしていない完全にマニア向けの物である。
しかしその情報量は比類無き物で、発売当時のグローランサマニアの活動が、いわば音速の壁をめぐって亜音速飛行のデッドヒートを繰り広げていたのに対して、そこにいきなり超音速の飛行記録を叩きつけたような物であった。しかも著者は同種の著作をその後もいくつも発表している。
いわばこれはグレッグス=スタフォードの圧倒的な個人プレイによる、RPGの背景世界の探求の一つの到達点であり、ユーザーへの挑戦でもある。グローランサの探求を続けるならぜひとも挑むべき課題だし、グローランサマニア以外も、一度は超音速の世界を垣間見てみるのも悪くはないだろう。
あとは、そろそろ着陸して再飛行の準備をいかにして整えるかが、1999年現在ののグローランサシーンの課題だろう。