ルーンクエスト


※当レビューは「Scoops RPG」ホームページにて掲載されたものを一部修正しています。

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著者: Greg Stafford、Steve Perrin、Lynn Willis、Steve Henderson、Sandy Petersen、Warren James/翻訳:田中勇樹
カテゴリ: RPGルールブック
発行社: 株式会社ホビージャパン
形態: ボックス・タイプ
ページ数: 本体108 + 分冊A28 + 分冊B16
値段: 4500円+税
レビュー著者: 宇津見(wfe0wyrm@mbn.or.jp)
プレイの有無: 有

※写真は本体冊子です。

 これは、Chaosium 社製作、Avalon Hill 社販売の汎用ファンタジーRPG『Rune Quset Standerd set』を翻訳した物である。
 全体の傾向として、プレイアビリティはヘビー(重い)であるがが、それゆえにハード(本格)志向である。戦闘ルールの手順の多さとシビアさ、本格的な魔術ルール、社会背景関連の充実などがそれを現している。

●キャラクター

 まず基本となる能力値として、STR(筋力)、CON(強靭)、SIZ(体格)、INT(知性)、DEX(敏捷)、POW(精神)、APP(容姿)が設定されている。この能力値からさらに、戦闘時に使う「SR(後述)」や、耐久力、魔力、疲労、技能修正値等を求める。特に耐久力は、トータル耐久力と、体の各部位の部位別耐久力の二種類ある。
 これらとは別に、〈視力〉、〈登坂〉、〈応急手当〉といった基本ルールで30種類以上の細分化された技能が存在する。

 キャラクター作成で特徴的なのは、そのキャラクターの文化形態と、その文化内での職業の経歴を決めることである。文化形態は未開/遊牧/封建/君主の四種類であり、それぞれの社会毎に4〜13種類の経歴がある。獲得できる技能や装備、信仰、魔術などは、文化と職業、そしてその経歴で過ごした年月に大きく左右される。

●行為判定と戦闘

 判定そのものは、1D100で、能力値の倍数や、技能から求められる百分率の成功率以下を出せば成功という、シンプルな物である。

 戦闘は、通常のラウンド進行に加え、1ラウンドをさらに10段階の「SR」と呼ばれる単位に分割した独特のものである。
 各キャラクターは、能力値のDEXやSIZ、武器のリーチなどの合計から、必要なSRの量を求める。実際のSRの進行が行動に必要な量に達すれば、そこで行動する事になる。

 攻撃や防御は通常の行為判定で行なうが、成功段階、武器の種類ごとの特殊効果、身体部位別のダメージとそれによるペナルティなど、事細かに効果が定められている。
 攻撃の際には、攻撃側が攻撃手段の成功判定、防御側が防御手段の成功判定を行う。そして攻撃側は相手側に与えるダメージ量と命中した身体箇所を求め、防御側は防御手段に応じた効果でそれを軽減もしくは無力化する。効果は成功段階と攻撃/防御手段に応じて変化する。ただ、攻撃や防御の可能な回数も厳しく制限されているので(普通のキャラクターなら概ね攻撃と防御を一回づつか、どちらかのみ二回連続)さらにシビアである。

 真剣勝負でなおかつ豊富な描写ができる戦闘ルールを求めている人にはぴったりである。危険度は比較的高い部類で、しかもさまざまな効果が豊富にあるために「メイスの強烈な一撃で背後の壁に激突して、追い討ちダメージを受ける」「剣の必殺の一撃で右腕が切断」「敵の槍が腹を貫通」「槍の強烈な一撃が相手の盾に引っかかってしまう」「脚に重傷を負い出血が止まらないが、それに耐えながら反撃の一撃を加える」といった光景が頻繁に見られる。

●魔術

 民族学的な呪術を意識した「精霊魔術」、神への信仰を源泉とする「神性魔術」、個人の技術により力を引き出し、様々な操作を行なう「魔法(後に魔道に訳語変更)魔術」の三種類の魔術が存在する。
 この三種類はそれぞれ、行為判定で発動したかどうかを判定し、抵抗する相手に対しては相手との魔力の抵抗ロールで勝てば影響を及ぼすことができるという点では共通しているが、習得方法や使用の手順などは大きく異なる。

 精霊魔術はいわば「まじない」で、シャーマニズム的な精霊を呼び寄せ魔力のぶつけ合いによる戦いを行い、勝てばその精霊の呪文を習得できる。発動成功率は本人の POW×5 である。魔力の消費などのコストは低いが、威力は、剣の切れ味を増したり、簡単な傷を治したりする程度である。

 神性魔術は「神の奇跡」であり、神に自分の POW を削って捧げることにより、その神の能力に由来した呪文を習得できる。発動成功率は常に100%であるし(ただし重量などによるペナルティや、ダイスの目による自動失敗の適用は受ける)魔力の消費も不要であるが、使うと『ウィザードリィ』や『Dungeons & Dragons』のように呪文の記憶そのものを消費してしまう。威力も「落雷を敵に落とす」「すべての傷を一瞬にして治す」など派手ではあるが、先に紹介した理由で頻繁に使うことは困難である。

 魔法魔術は「論理と学問としての魔術」で、呪文の操作のための技能や、一つ一つの呪文に個別に成功率があり、通常の技能と同じように経験や訓練でそれぞれ個別に成功率を向上させていく必要がある。使用時には、操作技能と呪文を組み合わせて、使っている技能や呪文のうち最も低い成功率が投射成功率になる。威力や操作の度合いに応じて魔力を消費する。技能を向上させるのは困難ではあるが、技能を使って持続時間や射程距離などを自在に操作できるのが最大の魅力である。ただし、このルールブックでは基本的な威力を調整する<強度>技能しかなく、他のはすべて『上級ルール』に収録となっているので、この時点ではあまり意味が無いのが残念である。

●ハード&ヘビー

 キャラクター作成一つとっても、各文化圏の職業ごとの人口分布の割合に忠実に経歴が決まる。そのため、ルールに忠実に作成したキャラクターの九割は農民になるはずである。もちろん農民の経歴で獲得できる技能や装備は、本格的な戦闘は到底無理である(私個人としては、よほどの覚悟を決めるのではない限り、経歴表は冒険向きの確率分布の物を自作するか、プレイヤーの自由選択にする事をお薦めする)。
 戦闘でも、生身の耐久力や防御力が飛躍的に向上することはまず無く、鎧もなしに剣の一撃を受ければ即座に重傷である。しかも多数の敵を相手にすれば途端に防御しきれなくなる。したがって、現実と同じように、武器の扱いなどの技能や、装備(魔術を含む)、なによりも生き残るための知恵を充実させる必要がある。

 一方、キャンペーンを通してできる事の自由度は極めて高い。
 古い時代のゲームということはあるが、基本的には行為判定(戦闘行為や魔法の使用も含む)のルールのみで、ドラマ性やキャラクター性、ヒーロー性などを表現するルールは皆無である。一方、各キャラクターごとの宗教や文化圏などによる制限をクリアしていれば、技能、装備、魔術、職業などの獲得や向上など選択の幅は広く自由度が高い。上級ルールを導入すれば、他のゲームではNPC用に限定されているような高度な魔術の使用や、マジックアイテムの製作なども可能である。
 別売りの背景世界サプリメントも、地理、民族、宗教、風俗等極めて詳細かつ充実している。

 もしあなたが、重厚で詳細な裏づけを持ち、自由度の高いキャンペーンプレイを望んでいて、後述する問題点をクリアできるなら、ルーンクエストは文句なしに薦められる。

●構成の問題

 しかし、重大な問題もある。

 このコンポーネントの基本的な内容は、現在はブックタイプで発売されている『Rune Quest DX(英語版)』から必要最低限のルールとデータを抜き出した、入門用の『スタンダードセット』を翻訳した物である。
 ただし抜粋はしたものの、これ単体でプレイするためのルールの再構成が殆ど行われていない。戦闘ルールの特種行動や魔術の高度な使い方などは、確かに上級にまわしたほうがいいだろう。しかし、各種呪文のうち通常の方法で使用するものは全て収録してほしかった。なにしろ、神性魔術の神が提供する呪文一覧のサンプルの内、半分以上はこのセットには収録されていない。
 他にも、クリーチャーもせめて二倍の数は収録してほしいし、上級ルールに収録されている社会的背景に関する記述やルールもいくつか収録してほしかった。

 これらは、ルーンクエストの特徴であるハード&ヘビー志向を大幅に損ねている。本格的にプレイをするなら、別売りの『上級ルール』が必須である。正直言って、余計な出費をユーザーに強いているだけである。

 また、全般に非常に読み進めづらく、記述ミスも多い。特に戦闘ルールを理解するのが困難である。それどころか、プレイ例でもしばしばルール適用を間違えている始末である。過去の『RPGマガジン』の解説記事か、ルーンクエストのプレイ熟練者の手引きは必須だろう。

 あと、汎用ファンタジーRPGという方針を一応取っているために、背景世界は別売りのサプリメントを導入するか、自作するしかない。
 しかし、ルーンクエストの魅力は本格的ファンタジー世界「グローランサ」に寄るところが大きいので、是非ともグローランサでのプレイをお薦めする。最初に導入するサプリメントは『ゆりかご河』をお薦めする。

 なお、そうした手引きや資料は、『RuneQuest Japanese Edition』に数多くある。

●その他

 箱絵や表紙のイラストは英語版に忠実で格調がある。本文のイラストは、日本独自のものに差し替えられているが、重厚さを充分感じさせるものである。
 二冊のルールブックの他に、一本の簡単なシナリオと、簡単なプレイ例を収録した冊子、ダイス、キャラクターシートが付属している。

●総合評価

 先に述べたように、ハードかつヘビーな内容で、重厚で詳細な裏づけを持ったキャンペーンプレイを望んでいるなら強くお薦めできる。
 しかし、ルールブックの読みづらさと『上級ルール』に無用に分散している箇所が多すぎるのが問題だ。