ルーンクエストコンパニオン
※当レビューは「Scoops RPG」ホームページにて掲載されたものです。
著者:水野良、すぎさきあきら、高山浩、青花悠ほか |
『ルーンクエスト』の日本語版製品がようやく基本ルールと上級ルールがそろった直後に、『月刊タクティクス』の別冊として出版された書籍。内容は主に、グローランサの背景世界設定と神々の概略、ルール運用やセッション運営のノウハウ、実際のセッションのリプレイ等からなっている。
入門ガイドであると同時に、多分に日本語版発売準備中の各種サプリメントの先行公開といったニュアンスが強い内容である。翻訳未訳の各種情報が充実した現在の目で見れば辛い部分もあるが、それでもなおよくできている部分も多いし、そもそも日本語版は基本ルールと上級ルールのみという当時の状況からすればむしろ非常に充実しているともいえる。
カバーアートは『ワースブレイド』のイラストなどで知られている幡池裕行氏だが、これも『ワースブレイド』の物のようで『ルーンクエスト』に合っているとは言いがたい。
判型はA4と大きくイラストもカラー、モノクロともに豊富で、草薙氏の物など質が高い物も多い。
以下に章ごとの内容を紹介して行こう。
・RQほとんど完全リスト(市川明・国海武・多田良太・水野良・弓下弦)
日本語版の元となったアバロンヒルの三版と、未訳のケイオシアムの二版のほぼ全商品の箱絵、表紙と内容を紹介した章。なお、”ほとんど”となっているのは、ケイオシアムの商品二つがどうしても入手できなかったための謙遜。
・グローランサモンスターマニュアル(イラスト:草薙琢仁)
グローランサのクリーチャー解説。クリーチャー一つ一つに草薙琢仁氏のイラストが添えられている。
・グローランサ史概説(すぎさきあきら)
当時翻訳発売準備中だったサプリメント『グローランサ』のグローランサ史の紹介。『グローランサ』発売前の先行公開的な意味合いが強い。
・華麗ならざる神々の関係(水野良)
グローランサの代表的な神々それぞれの神話と信者の活動、ロールプレイのスタイルについて解説した物。
意外な事ではあるが、ここで書かれているような解説は日本語版製品では、異種族の神では『グローランサ古の秘密』、一般的な神にいたってはかなり後に発売された『ゆりかご河』になってはじめて掲載されている。こうした解説は原書第二版でいろいろとなされていたが、第三版の前期の製品展開は二版の知識を前提にしている部分が多く、その結果第三版をもとにした日本語版製品ではそうした情報が欠落したままになっていたのである。
この記事も第二版の情報をもとに書かれており、『月刊タクティクス』や『月刊RPGマガジン』で提供される情報とともに、そうした当時の欠落した情報をよく補ってくれた。
イラストは韮沢靖氏による物で、正確な描写とは言いがたいが、雰囲気は十分出ている。
・グローランサ観光案内(すぎさきあきら)
グローランサ史概説同様の趣旨の記事で、グローランサ各地の地理の紹介。
・ドラゴン・パス クエスト(栗村雅男)
ボードウォーゲーム『ドラゴンパス』の紹介と、各シナリオのプレイのノウハウ、Q&Aを掲載した記事。
・合言葉はKILL CHAOS!!(高山浩)
トロウルとのトラブルを解決するために奔走するプレイヤーキャラクターたちを描いたリプレイ記事。戦闘の危険さ、一筋縄では行かないカルト間の関係などを描いている。
ただ現在の目から見ると、同じ社会内でのカルト間の関係に、社会的分業や優位性といった要素が欠けたまま、単なる同格の結社の勢力争いのような扱いになっているのが残念。
イラストは草薙琢人氏。
・グローランサのための原色アイテム大図鑑(水野良)
ルーンクエストの武器と防具、そしてグローランサでの位置づけについて解説した記事。これも三版では欠落した情報で、それを補ってくれた。
添えられているイラストは、写実的に書こうと努力しているのはわかるが、デッサン彩色ともにあまり質の高い物ではない。それでも説明用のイラストとしての機能は充分果たしている。
・ルーンクエスト遊戯指南(青花悠)
キャラクターメイキング、ルール運用、セッション運営、効果的な行動や戦術のノウハウについて解説した記事。現在の目で見るとやや物足りない部分もあるが、それでも現在の初心者にも充分お薦めできるだけの内容である。
・RQおタスけ質問箱
Q&A集。
・狼の使者(サンディ・ピーターセン/翻訳:西村ヒロユキ)
テルモリ(人狼)族の略奪者との対決を描いた、スタンダードな追跡討伐シナリオ。テルモリカルトの短い解説付き。
・「狼の使者」を捕らえろ!!(青花悠)
先のシナリオを実際にプレイしたセッションのリプレイ記事。
発売時期を考えれば非常に充実した内容と言ってもさしつかえないし、各種製品や情報が充実した後々の時期でも参考になったり、貴重だったりした情報も多い。これは、未訳だったり稀少だったりする情報や、単なるルールの要約に留まらないプレイのノウハウなどをしっかりと紹介しようとする姿勢の結果であろう。当時の『ルーンクエスト』への購買やプレイの意欲や、今後の商品展開への期待を盛り上げるという点でも、充分に成功している。
こうした内容や情報の充実度や、あるいは各セクションを複数のライターで分担して書くといった合理的な制作方法が、後々の富士見の『よくわかる本』などのガイド本では消え去ってしまったのが残念である。