はじめに
●シナリオの設定
以下の内容は、セッション開始時にプレイヤーたちに話しておいてください。
このシナリオは、中堅あたりからルーンレベル直前あたりまでの強さの、ルナー帝国内の都市で冒険者として活動しても問題ないようなキャラクターを対象にしています。
具体的には、キャラクター作成の際の年齢は25際以上で、冒険向きの経歴を積んで作成したキャラクターに相当。得意技能が65%〜95%、いくつかの精霊魔術と神性魔術が使用可能であり、そこそこに武装や呪付物を所持している程度でしょう。
カルトはルナー神殿か太陽神殿をお薦めします。TOMEで紹介された数々のカルトが、キャラクター作成の大きな助けとなるでしょう。
プレイヤーの人数は3人〜5人が適切としています。
このシナリオはシティアドベンチャーであり、単純な武力以外にも、<人間知識><雄弁><言いくるめ>といった社会的行動に使える技能、あるいは知覚系や隠密系の技能を持っているキャラクターが必要となります。
経歴やカルトから連想できる、裏の世界や政治関係やカルト等とのある程度のコネを利用することも考慮すべきでしょう。たとえば、特殊な知識の時間のかかる調査ならイリピー・オントールのカルトの知人に任せてもいいでしょうし、警察権力や政治権力による障害をすり抜けるには政治的なコネ、裏情報や潜入、偽造などは裏の世界のコネを利用するのが有効でしょう。そうした可能性をプレイヤーに示唆してください。ただし、こうした援助は頼む相手に無理の無い範囲で多少の便宜をPCに図る程度で、決して万能でも、ましてやPCの行動を肩代わりしてくれるものではありません。
●シナリオの背景
ドブリアン君主領では、現在ヤリアーノ氏族の勢力とマイアン氏族の勢力が、ヤリアーノ氏族優勢の状態で均衡状態にあります。現在のサルタン(君主領総督)はヤリアーノ氏族のヴォルン・ヤリアーノです。
ドブリアン・シティに在住の商人であり、マイアン氏族の一員であるオルテギウス・マイアンは、実は啓発の暗黒面に陥っています。屋敷の地下に岩塩の古い坑道を発見し、そこに隠されていた古代のオーガ貴族のミイラと、その忌まわしい行為を記した書物に見入られ、以後そこで忌まわしい行為を行っていました。
その行為とは人肉料理です。貧民街の浮浪者などを、執事にして子飼いの暗殺者であるオオトモが殺害して連れ込み、時には赤ん坊を生きたままさらってきて、その遺体を使って自ら料理を行って食するのです。
ある日、オルテギウスは地下室への、私室の秘密通路の封印を忘れてしまいました。そこから、たまたま主人を呼び出そうと私室に入ってきた料理人のメイに"調理"を目撃されてしまいました。そのときにオルテギウスは気がつかなかったのですが、翌日オオトモがそのことを察知して主人に忠告しました。オルテギウスはオオトモに、メイを事故死に見せかけて暗殺させようとしましたが、一足早くメイはオルテギウスの館を逃げ出していました。
オルテギウスはオオトモにメイの行方を探させましたが、五日の間見つけることができませんでした。そして六日目にたまたま、ジョビアンと同行して、ドブリアン・シティにやってきたイマラの街頭演説を見てみました。その際オルテギウスは白の月のカルトにメイの姿を見つけました。メイは貧民街に逃げたところを、イマラに救われて白の月のカルトで炊事係をしていたのです。
オルテギウスは当然、メイをその場で捕まえようと踏み出しましたが、そこをイマラに遮られて以下のように言われました。
「邪悪なる飽食者よ 汝は飽き足りることを知らぬのか 食らい続けるために 新たなる者をさらに食らおうとするのか」
イマラは事情を知らず、メイも事件のことを誰にも話さずおびえたままなのですが、イマラは、オルテギウスをおそれるメイの様子と霊感によって、オルテギウスの邪悪さを悟り、このような言葉でオルテギウスを威嚇したのです。
一方オルテギウスは疑心暗鬼に駆られ、イマラやメイを即座に始末すべきなのか、それとも迂闊に手を出して藪蛇となる危険性があるのかと判断に迷い、とりあえずはオオトモに監視を命じました。その場にいた他の者たちは、ただ単にオルテギウスの(表向きの)グルメ趣味を非難した言葉とのみ思っています。
また、ジョビアンはイマラを最初に見た際に特別な感情を持ちました。なぜならイマラは、20年前に生き別れた妹と同じ名前と同じ特徴的な瞳を、そして覚えのある真鍮の腕輪を持っていたからです。そして同行していたオルテギウスの、イマラへの異様な視線に強い嫌悪感を覚えました。妹であるかどうか確認したいと思っており、妹であったとすれば、一緒に過ごせないまでも、せめて身の安全だけは保障してやりたいと考えています。
また、このときジョビアンはメイと顔なじみで、このときの巡回もメイを探すためでした。このときメイの姿を見たのですが、先に述べたイマラとオルテギウスのやり取りの最中、メイは見えないところに下がってしまいました。
●進行の概略
このシナリオは、プレイヤーたちが常に町のあちらこちらを歩き回って、情報収集や対人折衝をすることを念頭においています。したがって第1、第2、第3パートという大まかな流れは用意していますが、強力な流れのストーリーは用意していません。
特に第2パートはかなり流動的でしょう。GMは第2パートでプレイヤーが充分な成果(もしくは致命的な失敗)を得たと判断した時点で第3パートに移行することになります。第1パートと第3パートはストーリー的な流れが強く、第1パートは第2パートへの布石を提示すること、第3パートはストーリー的な収拾を目的とします。
まず第1パートです。このパートはプレイヤーが行動指針を決めるための初期情報を提供するパートで、プレイヤーが多少怠慢でも、GMの側からどんどん情報を提供していってください。
冒頭で、PCはジョビアンから、行方不明になったメイを探し出すように依頼を受けます。この際、白の月のカルトに身を寄せているらしいということ、白の月のカルトと市当局の扱い、オルテギウスが極めて敵対的な態度をとっていることと、彼がイマラにも妙に注目していたこと等について、プレイヤーに告げてください。また、白の月のカルトとイマラについても調べるように頼んできますが、イマラとの血縁関係の問題は一切話しません。
続いて白い月のカルトの活動を調査したり、接触を試みたりすることになります。
そこでオルテギウスの横暴な振る舞いを目の当たりにしたり、また貧民街での謎の猟奇犯「狩人」(正体はオオトモ)について知ったりします。ここでは、プレイヤーが特に調べなくても、話しかけた相手のほうから町の噂として話してくるようにしてください。
こうして第一パートで以下の三点を強調し、プレイヤーの注意を促して、続く行動の発案を促してください。
・「白の月のカルト」の活動とメンバーとの接触
・「狩人」に関する噂
・オルテギウスに対する印象
続いて第2パートです。
ここでは第1パートで得た初期情報を元に調査や各種行動を展開させていくことになります。第1パートと違ってプレイヤーの自主的な行動が重要になります。プレイヤーがそうしたことに消極的なら、一度酒場にでも集めて作戦会議をさせ、GMがいくつかの行動の選択肢を示しつつ、今後の行動案をGMに提出させることによって軌道に乗せましょう。また、最初のころはジョビアンは街にいませんが、途中から街に戻ってくるので,助言や助力を与える存在として使うとよいでしょう。それでもろくに行動しないようなら、容赦なく時間を経過させて冒険を失敗に終わらせましょう。
白の月との接触を試みるなら、貧民救済活動に協力したり、友好的な神学上の談義をおったりするのがよいでしょう。プレイヤーによっては白の月の神話を調べるかもしれませんが、今回のシナリオではあまり重要ではないのでほどほどで切り上げましょう。
上手くすれば友好的な関係を築け、メイのことを詳しく知ったり、イマラに直接あえたりするでしょう。
猟奇事件に関しては、町の警備隊や浮浪者への聞き込みが効果的です。張り込みも効果的で、場合によっては警備隊側から提案してもいいでしょう。上手くすれば、犯人がオルテギウス邱に入っていくところまで追えるでしょう。
また、ジョビアンがイマラに対して強く注目していることも強調します。
オルテギウスを追う場合は、まず彼の所在とスケジュールを知ることが重要です。これは容易に知ることができ、おおむね屋敷か自分の店にいることがわかります。
比較的高い社会的身分を示す(もしくは騙る)なら護衛が多数ついたうえでのオルテギウスと直接会って話をすることができます。
また、猟奇事件の流れから追うなら、屋敷に潜入することもあり、そこで思わぬ立ち話を耳にするかもしれません。
オルテギウスはセッション中、一度はパーティーを催すので、直に会うにしろ、潜入するにしろ、格好の機会になるでしょう。
もちろん、プレイヤーがもっと良いアイデアを思いつくなら、それを採用しましょう。
そして第3パート。このパートは危機的な状況の到来と、その打破による解決です。第2パートで充分に情報を集め布石を打ったか、あるいは小康状態が終わった、あるいは致命的な失敗をしたと判断した場合にこちらに移行してください。
オルテギウスとオオトモは、PCたちとメイの抹殺を決断して、罠に誘い込みます。
PCたちはこの罠を突破して、場合によってはオオトモを倒し、逆にオルテギウスを追い詰めることになります。しかし彼の邸の地下室で、過去の邪悪な亡霊と、巨大な怪物機械を相手に戦うことになります。
●街での行動について
このシナリオでは情報収集と対人折衝がメインになり、そのために街のあちらこちらを移動して活動することになります。
GMは、PCがその段階で把握しているであろうこの都市の重要地点を、このシナリオ付属の地図や、箇条書き、口頭などで示したり、あるいはプレイヤーのアイデアを募ったりして、PCの活動を促してください。
聞き込みでしばらく歩き回る、誰かと会ってしばらく話す、どこかに忍び込んで調べる等、まとまった行動を1行動とカウントします。1行動はおおよそ三時間で、普通に日中十二時間のみに行動すると、一日に4行動できることになります。
行動回数に制限があるうえに、期限は依頼条件では十日、実際のセッション進行では様々な理由で時間や日数に制限がかかるために、PCたちを分散行動をさせた方がより多くの行動ができることになります。ただし当然のことながら、一つの行動で複数のPCが協力したほうがよい場合もあります。
不特定多数に聞き込みをする場合に成否判定をしたい場合は<人間知識>が適当でしょう。
特定の人物に対して聞き込み、説得、頼み事などをするなら、具体的にどのような話し方をするか、どのような条件を提示するか、何らかの報酬を払うかなどをプレイヤーから聞いて<雄弁>、場合によっては<言いくるめ>で判定するといいでしょう。プレイヤーの提案が特によいものだったり、逆にまずいものだったりすると、ボーナスやペナルティを−35%〜+35%の程度つけましょう。また、相手の様子の観察や、どのようや方法で話をすればいいかの指針を得るためには<人間知識>が適当でしょう。
もちろん、場合によっては他の技能が適当な場合もあるでしょう。また、明らかに受け入れられないような提案は、たとえ<雄弁>の決定的成功でも認める必要はありませんし、逆に決定的な条件を提示しての提案であれば技能判定を不要としてもいいでしょう。
また、街の中で重武装は禁止されます。問題なく所持できる武器は、ダガー程度の大きさや威力の武器で、街の無法者もこうした物を持っています。しかし、官憲に咎められる口実にもなりますので、あまり表立って見せびらかすべきではありません。
公認の戦士/軍事カルトのメンバーであれば、いちおう本格的な武装は可能ではありますが、それでも軽装の鎧と片手武器程度が限度で、それ以上の重武装は咎められるでしょう。
危険があらかじめ予想されるところに重武装を持ち込みたいなら、特別な許可を取るか、<物を隠す>技能などで上手くカモフラージュして持ち込むしかないでしょう。
また戦闘に関しては、相手を殺害した場合、明らかな正当防衛以外は重罪となりますし、重傷を負わせてもかなりの罪になります。家屋への不法侵入、窃盗、恐喝なども当然罪となります。
こうした罪を犯した場合、刑罰の程度や、刑の執行までの猶予期間は、後援者の権力や、弁護をしてくれるイリピー・オントールなどの雄弁家によって,大きく左右されます。
ただしこれは、こうした事をしてはいけないというわけではなく、プレイヤーがPCの犯罪行為を上手く隠蔽したり正当化したりできるなら、GMはそれを認めるべきです。+