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第一パート

●シーン1 導入
 PCたちは、ジョビアンから内密の呼び出しを受けます。場所は昼間の浴場で、そこの蒸風呂でお忍びのジョビアン自身が待っています。

 ジョビアンの依頼は、一週間前に行方不明になったメイの捜索です。
 メイは元々ジョビアンの所属する北駐屯地で炊事係をしていたのですが、半月前にオルテギウスに料理の才能を注目され、彼の館の料理人見習いとして雇われました。しかし四日前に巡回の途中、オルテギウス邱の使用人にメイのことを尋ねると、急に郷里に帰ったと言われました。しかし街から一日ほどで到着するメイの郷里の農村に使者を送って確認したところ、帰ってきてもいないし何の音沙汰も無いとのことでした。
 そしてジョビアンはイマラが来た当日、部下を率いてオルテギウスとともに市内のパトロールを指揮していました。そこで「シナリオの背景」にある事件と遭遇し、メイとイマラを目撃しました。 依頼は、メイを探しだしてジョビアンのところにつれてくること、危険な状態にあるなら保護することです。ジョビアンはこれ以上自分で行動したくとも、依頼の翌日から公害の演習場での訓練に三日間従事しなければなりません。距離的にはすぐ戻ってこれるのですが、中隊長という立場上、仕事を放棄できないのです。
 報酬は1グループまとめて500ルナー。プレイヤーが上手く交渉し、<雄弁>等の判定に成功するなどすれば、最大50ルナー上乗せしたり、あるいは前金として渡してもよいでしょう。
 期限は依頼の当日も含めて10日以内です。ジョビアンがこうした期限を設けた理由は、まずは早急にメイを保護すべきと考えているからです。また、イマラが来たことによって白の月のカルトに対して市当局が何らかの行動をおこすまでの猶予期間としての見通しによるものです。何よりもジョビアンはだらだとして成果を出せないような冒険者を必要としていません。


 白の月のカルトについての情報を訪ねてきたなら、イマラのデータに添付されている、白の月のカルトの解説のコピーをプレイヤーに渡してください。ジョビアンに訪ねるなら無条件に教えてもらえますし、PCの知っているであろう知識を引き出すなりするならINT×5に成功すれば既に知っていることと扱います。
 また、適当なところで<人間知識>ロールをさせ、成功すれば、ジョビアンがメイを心底心配しているということ、イマラに関しての話で特別な感情をもっていること等が推察できます。
 オルテギウスについて尋ねるなら、主に食料品を扱っている豪商であるということ、市の軍の半分にあたる軍南陣地を押さえているマイアン氏族を背景にしているということ(ジョビアンはヤリアーノ氏族派に相当)、氏族の権威と商業的成功を背景に、政治とグルメのに精力的であるといったことを教えてくれます。もちろん、人肉料理やニンジャ執事の事は全く知りません。

●シーン2 情報収集開始
 浴場を出た時点でPCたちは情報収集をしようとするでしょう。GMとプレイヤーは今後の方信をまず相談してください。もし、プレイヤーが怠慢なようならGMはそうした行動の重要性と、手近な指針を示しましょう。それでも明らかに怠慢なようなら、この冒険を失敗させるべきです。

 情報収集のルールは先に述べたとおりですが、既に昼下がりであるこの日の日中には、一回のみです。

 不特定多数に聞き込みを行った場合や、特定イベントでもなんらかの情報を与えたい場合に入手できる情報は以下のとおりです。第一パート全体と第二ハートの前半あたりで、技能判定の成功/不成功や、聞き込み先、方法、順序などを考えて、GMは以下の中から順次適当と思われる情報を与えてください。

白の月のカルトについて
・白の月のカルトは、貧民救済などで貧しい人たちによく慕われている
・慈善活動は実は見せかけのもので、本当は禍々しい邪教の儀式を行っているらしい(注:これは真実ではない)
・白の月のカルトのこうした活動は、一部の裕福な商人や貴族の支持も受けて、資金や物資の援助が行われている
・裕福な商人や貴族の情報を聞いたあとでさらに調べると、特別秘密というわけではないので、それが誰なのか知ることができる。ただし特に重要なNPCでは無いので、汎用データを流用したごく簡単な情報提供者や、協力者として扱うこと。
・白の月のカルトは見かけ上穏当な活動をしているが、秘密の集会場ではより過激な活動をしているらしい

オルテギウスについて
・オルテギウスは傲慢な権威主義で、市民の評判は良くない
・オルテギウス庇護下の血気盛んな20人ばかり青年たちが「清掃隊」を名乗り、路上の貧民たちに暴行行為などを働いている(注:人種差別主義者やネオ・ナチなどの集団をイメージしてほしい)。
・オルテギウスはマイアン氏族の有力者で、南陣地の兵士も彼の片棒を担いでいる。
・オルテギウスはペント人の執事(注:奴隷ではない)をよく連れている。

・オルテギウスはグルメ趣味を中心とした芸術趣味に通じており、そうした分野では評判よく、同じ趣味の者には愛想が良い。
・オルテギウス著作「究極のメニュー」。この分野では非常にすばらしい評価を受けている内容である。中でも斬新さを評価されているのは、新しい猿肉料理についての記述であるが、残念ながら他人にこれらのメニューが出されたことはない。

イマラについて
・イマラは、依頼を受けた日の一週間前にこの街にやってきた。
・イマラの来訪で、白の月のカルトは活気づいている。
・イマラは一般の聴衆に対しては言葉少なく、ただ迷えるものにごく短くも的確な助言や励ましの言葉を送ったり、病の者を治療したりしている。

ジョビアンについて
・仕事には真面目で、訓練では鬼のしごきで兵士たちに恐れられている。
・兵士たちの評判は、厳しすぎるという評価が半分、それでも公平でよい隊長であるという評判が半分というところである。
・上からの評判は、仕事には有能ではあるが、世渡りには無頓着で、現在の地位にとどめるのが一番といったところである。
・オルテギウスの「清掃隊」など、正規軍以外が街の治安で横暴な振る舞いをしていることに、常々批判的である。

メイについて
・北陣地での仕事ぶりは、非常に真面目だったが、あまり印象に残るような娘では無かった。
・オルテギウス邱での評判もよく、辞める理由も解雇される理由も皆目見当がつかない。
・オルテギウスには、料理の才覚を認められて非常にかわいがられていた。彼女もオルテギウスを尊敬し、恩を感じていた。

オオトモについて
・オルテギウスが最も重用している人物で、商談や、趣味の分野の交渉でも、代理人としてよく働いている。
・それなりに愛想はいいが、どこか薄っぺらな印象を与える。
・オルテギウス以外の、館や商店のものとは、仕事以外のことでほとんど話をしない。
・元はペント遊牧民だが、故郷で何か問題があって、ルナーまで来たらしい(注:本当はヴォルメインのニンジャである)。

狩人について
・時たま路上生活者が行方不明になることがある。黒いローブを全身にまとった怪人が、さらっていくところが何度も目撃されて、いつの間にか「狩人」という噂としてひろまっている。噂の元をたどっていけば、狩人のを直接目撃した者一人に行き着くことができる。詳細は第二パートで。
・「狩人」の正体は、オルテギウス配下の「清掃隊」である(注:これは真実ではない)。
・「狩人」の正体は、白の月のカルトである(注:これは真実ではない)。噂の元をたどっていけば、ペント人の行商人が最初に広めた噂とわかる。詳細は第二パートで。
・「狩人」の噂が広まったのは半年ほど前のことである
・「狩人」の犠牲者は、皆の噂によると、この半年の間に既に100人にも及ぶ(注:これは真実ではない)。
・「狩人」の犠牲者は、冷静に検討して、この半年の間に10人ほどであろう。

●シーン3 貧民街最初の訪問
 依頼当日に出向いても白の月のカルトが現れるのは翌日です。依頼当日に白の月のカルトを目当てに出向いてきたなら、通行人にでも、明日のほうがいいと示唆させましょう。
 翌日から貧民街をあたれば、白の月のカルトの活動をまのあたりにすることができます。白い月のカルトの情報については、貧民街の住人からは好意的な評価と不信感のある評価が半々、警備隊などからも治安を乱す恐れがあると嫌われていて、富裕層からも同様に嫌われています。ただし、富裕層の中には熱狂的な支持者も存在しており、白の月のカルトの活動はこうした人たちからの寄付によって支えられています。こうしたパトロンをあたってみてもいいでしょう。ただし、こうしたパトロンからあまり大きな情報や援助は得られません。情報は、シーン2で述べた情報程度ですし、援助も重要人物や集団を接触する際の紹介程度です。
 白の月のカルトの活動は、怪我人や病人などの世話であったり、悩める人の相談にのることです。聖書におけるキリストや使途の活動を参考にしてください。
 ただし、イマラはあまり頻繁に現れません。GMは必要と思ったときのみにイマラを出してください。イマラは時折、物見櫓等にのぼって「白い月からの声」を聞いています。 メイは第一パートの時点では姿を見せません。メイが「シナリオの背景」での事件でオルテギウスに対して脅えているのに配慮したイマラが、カタコンベ内の秘密儀式場にかくまっているのです。一般のメンバーにメイのことを尋ねるなら、彼らもとりあえずは庇うために、知らないといいます。しかし、容姿などを白の月のカルトの世話になった人たちに尋ねると、目撃したとの証言を容易に得られます。

 そうして一通りのやり取りを終えたあと、オルテギウスと、彼が率いる「清掃隊」がやってきます。彼らは長い棒などをもって、路上生活者や白の月のカルトのメンバーを追い立てます。もし彼らの活動に異を唱えるなら、彼らは「薄汚い連中を整理しているのだ」と言います。そしてオルテギウスは、彼らは故郷に戻って生活をすべきと主張し(実際には、経済的問題で不可能です)、清掃隊の若者たちは感情的な差別的主張を捲くし立てます。
 そして彼らが満足するなどした頃合いを見て、この地域の警備兵が来て、引き下がるように言います。彼らの活動に関しては、この地域の警備兵は、黙認するように南陣地の方からの圧力を受けています。彼らは路上生活者や白の月のカルトをを快くは思っていませんが、さりとて清掃隊の横暴な振る舞いには内心、強い怒りを感じています。

●シーン4 オルテギウス邱の最初の訪問
 メイの消息を調べるために、オルテギウス邱の訪問を試みる場合、最初の訪問では以下のようになります。

 オルテギウス邱には、オルテギウス、オオトモ、裕福な待遇の奴隷身分の使用人二人、自由人身分の料理長と、奴隷身分の料理人一人が住んでいます。

 オルテギウスのスケジュールを調べた上で訪問するのでなければ、オルテギウスがいる確率は昼間は三分の一、夜は三分の二の確率です。ダイスを使って決め手もよいですし、あるいはGMの判断でいるかどうかを決めても結構です。オオトモも最近は白の月の監視で忙しいために、昼夜ともに屋敷にいる確率は三分の一です。
 最初の訪問では、オルテギウス、オオトモともにいないことにして、帰りに二人と清掃隊数人に、出くわすことにするといいでしょう。

 オルテギウスがいない場合、充分な身分の保証を提示すれば(巧妙な詐称でも結構)使用人が応対してくれます。
 オルテギウスとのアポイメントを取りたいなら、執事に商談などの理由を提示する必要があります。了解を取りつければ二日後に20分ほどの対談時間を保証してもらえます。 またメイのことを屋敷の者に尋ねれば、非常に真面目に働いており、オルテギウスにもかわいがられていたこと。いつも幾分おどおどした印象があったが、行方不明の当日には明らかに何かに脅えている様子で、その日の夕方に外出するといってそのまま戻ってこなかったと教えてくれます。また、オオトモと目を合わせた時に、特に脅えていたとも教えてくれます。
 オオトモについて尋ねれば、二年ほど前に主人がどこからともなく雇いいれたペント人ということ、一見愛想は良いが、その実屋敷の他の者と一線を引いていたこと、オルテギウスの個人的な仕事を多く受け持っていることなどを教えてくれます。
 また、ジョビアンの依頼当日から五日後に、この屋敷でパーティーが開かれるということで、それの準備に忙しいともいいます。充分な身分の保証を提示して、オルテギウスの著作や芸術活動に興味があるなどと言えば、それほど問題なくパーティ出席の予約を取れます。

 オルテギウスがいる場合には、オルテギウスはアポイメントを取っていない者は、よほどうまく立ち回らない限り相手にもしません。
 アポイメントを取っているなら、比較的愛想よく話をしてくれます。その時、横には常にオオトモがいます。
 グルメ趣味や芸術関連の話題が一番よく話が弾みます。オルテギウスはあれこれと自慢のメニューを話します。そして最後には、「私は最近新たな食材を、霊感に導かれて発見しました。しかしながら他の方に公開するにはあまりにも勿体ないため、残念ながらこれ以上お話しはできません」と言います。
 商談もよいでしょう。
 メイのことを持ち出すと、非常にかわいがっていたのに、どうして急に姿をくらませたのかと憤慨した様子を見せます。何か後ろめたい理由があるのではないかとPCが牽制するなら、表面上平静を保ってそれを否定しますが、<人間知識>の成功で明らかに動揺している様子がわかります。

 また、この屋敷にはオルテギウス庇護下の青年による集団「清掃隊」が出入りしています。彼らは街の自警団を標榜していますが、その実態はオルテギウスの以降で暴力的な活動をする集団です。PCたちと出会えば、現代のチーマ集団のようなロクでもない威嚇を仕掛けてきます。邸の住人は、表向きは何も言いませんが、彼らに強い不満をもっています。

●シーン5 オルテギウス商会
 オルテギウス商会を尋ねるなら、そこは常に忙しい状態です。従業員は50人近くになります。
 こちらで得られる情報も、シーン4で館の一般の住人から得られる物と大差はありません。商談という形で、同じようにアポイメントを取れます。

●シーン6 猟奇殺人事件
 猟奇殺人事件について調べるなら、浮浪者や警備隊をあたるといいでしょう。
 事件がおこりだしたのは半年前で、これまでに犠牲者は14人に上りますが、正確な実数は誰も知りません。
 手口は、マントとフードで姿を隠したオオトモが一人でいる路上生活者に近寄り、浮浪者の喉を一瞬で切り裂いて殺害するというものです。オオトモが外出するための、館の他の者への口実は、食材の搬入作業で、実際に他の食材の仕入作業もしており、その途中で立ち寄って殺害をしているのです。
 そして死体を麻袋で包み込みます。そうして近くに待たせておいた、運搬下請け業社"マリウス商会"の小型馬車に、何食わぬ顔で他の食料品と一緒に詰め込んで、オルテギウス邱まで運びます。この前後に馬車は、通常の仕入のために街のあちらこちらに立ち寄っており、オオトモ一人で馬車を降りて仕入れてくる品もいくつかあるので、業者は死体の入った麻袋も食材だろうと疑いもしていません。マリウス商店の詳細は第二パートで述べています。

 白の月が裏でやっている怪しげ気な儀式殺人という噂も最近はあります。実はこの噂は、オオトモが注意をそらすために意図的にばらまいた噂です。<人間知識>に三行動分成功するなどして、噂の元をうまくたどっていくと、ペント人の薬売り(オオトモの変装)が言っていたという所までは行きつけます。
 また、同様に<人間知識>で噂の元をたどっていくと、ジャビンという浮浪者に行き着くことができます。ジャビンは遠目から殺害現場を目撃して、命からがら逃げ出しています。殺害の瞬間と、袋に詰めているところは目撃していますが、馬車に積み込むところまでは目撃していません。

 PCたちが張り込みも考えられるでしょう。これは第2パートに配置しましょう。オオトモは決してPCやその協力者の間近で殺人を犯すことはありませんが、うまくやれば殺人の直後にその痕跡をたどって追跡することが可能でしょう。そしてオルテギウスの館が怪しいことに行き着くでしょう。

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