さて、テルモリの林間地のところに話を戻さねばならぬな。ヴァラックスは赤い騎馬兵を見送り、藪から出て友人を捜そうとしていた。キャモアルは彷徨う彼を見つけて宿営地に連れ戻そうとしておった。ところが、アーグラスが闇の中で彼らを敵と間違えたために、あわや争いになるところであった。じゃがその場はなんとか取りなされ、その後は何事もなく過ぎていった。
翌朝、グドニはイサリーズに東への旅を祝福するよう祈ると出発した。途上、一行は騎馬の男たちに出会った。一行は歓迎の意を示し、彼らも能く歓迎の意を返した。彼らのリーダーはポル・ジョニ部族の「矢のたてがみ」氏族、“鞍に立つ”ジョバンと名乗った。彼は戦の指揮者であった。グドニはパンを共に食し、長く語らった。
何故“鞍に立つ”と呼ばれるのかと尋ねられると、ジョバンはグワンドル氏族の誰も見たことがない弓の神業を披露した。馬をだく足で林間地を走らせながら、彼は鞍の上に立ち上がって近くの木にひっかけた矢筒を正確に射抜いてみせたのじゃ。
彼らが同じ方向へ行こうとしていることが明らかになると、“鞍に立つ”は、旅の途中で彼の邪魔をせぬように、と警告した。グドニは彼にグワンドル氏族とポル・ジョニ族の間の長きにわたる友情と好意を思い起こさせ、彼に狼の兄弟の毛皮から取った足先を贈った。ジョバンは贈り物に感謝し、彼らの民との友情は確かなものだと再確認して去っていった。友たちはこの邂逅で共に大いなる名誉を得たのじゃ。
さて、一行は目的地の途上で偶然ゴルド族のステッドを見つけた。ローサーはステッドを迂回し、塔のルナーから隠れて河床を進むべきだと提案した。カタラは河床は馬にとってやっかいだと考えた。また、彼女の馬との精神的な結びつきによって、何事もなくステッドを通り抜けていくことが出きるだろうと考えた。そこでアーグラスは、彼の指揮に従って河床を進むようカタラを説得した。だが彼女は折れなかった。グドニはその魅力でカタラの考えを改めさせようとしたが、拒絶された。シグムンドは彼女にのし掛かるようにして必要ならば担いででも河床へつれていく、と脅したが、あざ笑われた。
そこで、守護戦士たちはやみくもに闇の中ゴルド族のステッドを通り抜けて行くことになった。馬蹄の音は間断なく響き、なんとか一行は塔の立つ丘の裏にたどり着いた。朝が訪れようとしておった。
山の頂は塔の頂上より高く、守護戦士たちは物見から隠れながらも塔の構造をよく見ることができた。一行は建物を偵察し、夜に空中から強襲することとした。一行は塔の屋根の上に降り立って一撃を見舞うことになるはずであった。
さて、彼らが山の頂で見たことについて語らねばなるまい。ジョバンとその一行がゴルド族の略奪して数頭の牛を連れて戻ってきたのじゃ。彼らは占領された塔の目前、谷の真ん中を騎馬で駆け下っていった。ルナーの騎馬分隊が塔から駆け下り、数頭の牛を連れて戻って来た。「矢のたてがみ」氏族は彼ら自身の旅を続けていった。
一行は攻撃の準備を整えねばならなかった。まず、一行は力の踊りを舞い、神々に歌を奉納した。
グドニは“雷を呼ぶもの”の怒りを自らの意の下におこうと、ふらふらと円を描いて踊りまわった。オーランスの雄羊は丘陵の上に集まり、雲の間には雷がまたたいた。アーグラスは稲妻によって邪悪な赤い者たちの目を眩ますことのできるよう、オーランスの正義を呼びたまわったが、そよ風は嘲りの笑い声をその耳に届けた――オーランスはそれを喜ばなかったのじゃ。そこでアーグラスは戦いでその剣の閃きを迅速なものとするようにマスターコスに願い賜ったが、応えはなかった。シグムンドは「大いなる雷石」とのつながりをもって石を祝福し、塔の屋根の魔法の守りを破ることとした。キャモアルはしなやかな“猫の舞い”を踊り、アリンクスの力を身に帯びようとしたが、その身には頬髭と短い尾が生えただけじゃった。ローサーは剣を人血の中に浸してその渇きを研ぎ澄まし、剣がさらなる血を求めるようにとフマクトに願った。カタラは“矢の盾”の舞いを踊ったが、護りの風は吹かなかった。ヴァラックスはストーム・ブルの力を斧の一撃に与えるよう願ったが、ウロックスはルナーから隠れている彼に不興であるようだった。彼の斧に宿る同盟精霊「打ち首」も、ヴァラックスを助けようとはしなかった。
ここで一行の準備が中断させられたことを話さねばならぬ。というのは、一匹のウズがキャモアルの肩を叩き、何のために魔法の準備を行っているのか尋ねてきたからじゃ。彼はサズドロフ氏族の狩人、ジョナケルと名乗った。
アーグラスはかように語った。「我らはそこなる塔を訪ね、其に我らの審判を下すのだ。我らはルナーどもに、オーランスその人の手による一撃を加えるだろう!」
トロウルは女王がそれについて話すことがあるだろう、と語り、彼が女王からの言葉を聞いてくるまで待つようにと述べた。グドニは、「大暗黒」の中でカイガー・リートールがオーランスと共に肩を並べて戦ったこと詠った詩を暗唱しようとしたが、彼の手下のトリックスター、ノーがジョナケルにまさに馬糞を投げつけようとしているのを見て言葉を失ってしまった。一行は女王の言葉を待つと確約し、準備を続けた。
シグムンドとグドニは座り込んでオーランスの精霊を呼び出した。彼らの周りの空気は呼び出された精霊の力で踊り始めた。二人はそれぞれ大きなシルフを呪縛し、支配した。
カタラとアーグラスは“移送者”マスターコスの力に願い賜り、塔まで飛ばしてくれるように助力を願った。だがマスターコスはその日はどこか別のところで忙しいようであった。
エルマルが西に沈む頃、ジョナケルは戻ってきた。彼は一行に女王の広間まで案内するので彼の後についてくるようにと言った。彼らはそうした。
さて、そこにはコザカングという名のウズがおった。その母はソーホラール、その母はブロアモラズ。彼はトロウルの神アーガン・アーガーに従っており、地上の住人とその言葉をいくらか知っておった。彼は女王が人間に言葉を述べようとする時には女王の舌となり、女王が人間たちが言わねばならぬことを聞くときには女王の耳となるのだった。彼はそれを非常に名誉としており、サズドロフ氏族のウズたちには、彼は賢人と考えられておった。
グドニは女王に素晴らしい挨拶を送った。だが女王の応えは怒りの唸りだったのじゃ。コザカングはグドニに近づき、彼が女王マルトラズの舌であり耳であることを語った。グドニはコザカングに話しかけ、コザカングが女王に話を伝えるということであった。
女王マルトラズは一行に丘で何をしようとしているか語るようにと言った。彼らはエンロたちを怯えさせるのに十分な魔法を呼び起こしており、女王は彼女の土地でそのような事をされるのを喜ばなかったのじゃ。グドニとアーグラスは「ランプ」の事、塔に対する彼らの計画を女王に話した。
女王は太陽を愛する者どもが彼女たちに復讐を企てることはあるまいな、と尋ねた。グドニは攻撃は強力な嵐の魔術で行われるので、赤い者たちは彼らに一撃を加えたのがオーランス信者であることを知らざるを得ないだろう、と説明した。女王はそれを聞いて喜んだ。
「月の者たちはわれら全ての敵じゃ」女王は語った。「打ちのめさねばならぬ」。そう言うと女王は袋を差し出し、グドニに渡した。その袋には5体のデイホール・シェイドが入っていると女王は語った。「赤い光を見つけたらばそれを解放するのじゃ。シェイドはそれを滅ぼすじゃろう」 それから女王は一行に駐屯兵のうちわけを説明し、そこには赤い光を帯びたルナー魔道士がいることを教えた。「赤い光は我らに痛みを与える」 女王は一行に語った。「これが我らの助力の代価じゃ。赤い光を消し去れ。それ以外の理由で袋を開いてはならぬ。シェイドはウズではない者すべてを滅ぼすじゃろう」
女王マルトラズはまた、グハブ山に住む姉妹たちの物語を語った。その姉妹たちは古い大地の精霊に対する力を持っており、友人を比較的容易に赤い塔に送ることができるだろうということだった。女王はその姉妹を見つけるための方角を教えた。
そして、その夜はトロウルたちが人間にごちそうをすることとなった。彼らは人間の食事を供し、それはまずまずのものだったのじゃ。夜も更けた頃、巨躯のトロウルの戦士、これはフマクト信者だったのじゃが、が進み出て、ローサーに親善試合を申し出た。故意の致命傷を与えないものだ、と彼は言った。ローサーはそびえ立つような獣を見上げると、そっけなく頷いた。
大歓声とやじの中、群衆の真ん中、マルトラズの椅子の前に円形場がしつらえられ、それをはさんで二人の戦士はお互いに向き合った。「フマクトよ、この戦いを祝福したまえ」 トロウルは詠唱した。ローサーは唸るようにそれに答礼し、そして決闘に集中した。ウズは梁のような大きさの剣を盾の後ろから取り出し、吼え声を上げて剣を振り回しながらローサーに向かって突っ込んできた。ローサーはウムッと唸って一撃を受け止めると間を取った。だがその時に彼の双剣、“まっぷたつ”と“死を呼ぶもの”で梁のような剣をもぎ取ることに成功した。かかとが円形場の壁につくほどであったので、ローサーは剣を十字に構えてフマクトのそばに近づき、眼前に剣撃の嵐による鋼鉄の網を作り上げてトロウルを後退させた。トロウル戦士の勝利の確信を浮かべた表情はすぐに消え去り、剣撃を防御するその顔は完全に集中した表情を浮かべはじめていた。ローサーは容赦なく踏み込み、ついにはトロウルを食糧トロウルキンの中にはじき出して転ばせてしまったのじゃ。倒れて意識を失ったトロウルを3エール向こうに運び出すには、全てのトロウルを動員せねばならなかったのだよ。
「これは全く印象的な離れ業だ」と、サズドロフ氏族の戦王は言った。「おまえたちの中で最強の戦士が、我ら中で最弱の者をうち破ったのだからな」
アーグラスは座から身を乗り出し「あなたがこの氏族で最強なのか?」と戦王に尋ねた。彼は応、と答えた。「では、我らの中で誰が最強なのか見せてやらねばならぬ」 そしてアーグラスは武器を抜いて円形場の向こうの大トロウルと相対した。ウズはアーグラスが近づくに任せ、両手持ちメイスで人間を地面にめり込ませてやろうと無頓着に一撃を放った。アーグラスはグンと前に出ると、トロウルに死の一閃を与えかねないほどのところで武器を止め、後ろに下がって笑顔を浮かべて剣を置いた。彼は友人たち、そして氏族の一部の者からも喝采を浴びた。アーグラスはこの試合で大きな名誉を得たのじゃ。
グドニはカイガー・リートールとオーランスが混沌と戦った事に関する詩を詠唱した。今度は邪魔は入らず、女王は大いに喜んだ。
暗黒が下り、絶望が下りた。
二人は戦った、よく戦った。
征服されざる男と女は、
力を合わせ、共に戦う、
ラグナグラーの落とし仔が大地を荒らす時、
シェイドとシルフは共に戦う。
赤い月が昇り大地を荒らす今、
暗黒と嵐はもはや戦ってはならぬ、
その光が止むまでは。グドニはコザカングと夜が更けるまで語り明かし、二人は友、同盟者として別れることとなった。
どんな酒にも潰れることのないヴァラックスが、飲み比べの挑戦を受けたことは語っておかねばなるまい。ウズはひどく驚いたが、おもしろがって彼を飲み比べに加えた。だが彼らは“石焼き”と彼らが呼ぶエールをヴァラックスが大瓶で三本開けたことに驚く事となったのじゃ。ヴァラックスは4本目を飲み干すと、満足したぞと大声を上げて床に昏倒し、また彼らを驚かせることとなった。
シグムンドはトロウルから腕相撲の挑戦を受けた。彼の腕は机に叩きつけられたものの、傷は全く負わなかった。キャモアルはトロウルの狩人から弓の挑戦を受けてなかなかのところまでいきおった。
その夜、狩人はゾングの道へ入信する者のために、試練を行った。その者は油を塗られたトロウルキンを捕まえ、心臓を食わねばならんというのじゃ。カタラは彼と競争してみるようにと勧められた。油を塗られた食用トロウルキンが連れてこられ、室に放たれた。カタラと若い有望なトロウルはそれを追い回してテーブルの下に追い込んだ。カタラは回り込んでそれを捕まえおった。慣習によれば、彼女はその絶叫を無視して心臓を切り開き、それを食べるよう期待されておった。その代わりに、彼女はそれを志願者に与え、氏族から多いな賞賛を得たのじゃった。
今夜の話はここまでじゃ。
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