The Coming of the Hero Wars

〜英雄戦争の到来〜

■「HeroWars」とは?

出版に必要な資金も集まり、今年の秋〜年末に発売が見込まれている「Hero Wars」(英雄戦争)。噂だけは去年の初めごろから流れていますが、その全貌についてはいまだはっきりしたことが分かっておりません。このゲームははたしてどのようなものなのでしょうか?

このコーナーでは、現時点で分かっている情報+まりおんの推測から、このゲームがどのようなものになるか予測してみたいと思います。なお、「予測」ということで、実際の製品と違うところがあるかもしれないことはご了承下さい(精度は60%を割るかも(笑))。

■「RuneQuest」から「Hero Wars」へ

まず、「Hero Wars」なるRPGが発売されるに至ったかの経緯について。

最大の要因は、RuneQuest第3版(日本で邦訳されている版)の発売元 Avalon Hill 社の販売不振のため、RuneQuest のサポートがほとんどされなくなってきていたためです。実際、90年の半ばごろから、マテリアルはあるのに本が発売されないという状況が続いていました(※)。結局、Avalon Hill 社のRPG部門は98年年末に買収されて消滅してしまうことになります。

また、Avalon Hill 社が発売元となっているため、基本的に新しいマテリアルが Chaosium 社から提供されることはなく(製品が売れても Chaosium 社に大きな利益があるわけではないですから当然ですが)、傑作の声の高い第二版の「Pavis」、「Big Rubble」、「Griffin Mountain」などの、作り込んだサプリメントを作る「体制」ではなかった、ということもあったようです。

※「Prax Pak」、「Edge of the Empire」、「Soldiers of the Red Moon」といったサプリメントの原稿が完成していたにも関わらず、これらが発売されることはありませんでした。

こうした事から、95年〜96年頃、グローランサを舞台とした新RPGを発売しようという気運が高まってきました。

当初はイタリアの Stratelibri という会社とライセンス契約を結び、そこからウォーゲーム+RPGを発表するという計画でした。ところがこれは資金面の問題から立ち消えとなり、結局 Chaosium 社の子会社として Issaries Inc. という有限会社を立ち上げ、そこを発売元として新グローランサRPG「HeroWars」を展開していくこととなったのです(※)。

※ ここでまた資金の問題で一悶着あったわけですが……

■「HeroWars」は何を目的としているのか?

RPGの題名のとおり、グローランサの運命を決めると言われている「英雄戦争」の中で、PC達が英雄(あるいは英雄候補生)として戦っていく事です。

RQ/グローランサの問題点として、英雄に近づくための「ヒーロークエスト」ができないこと、システムとして「英雄」を扱う事ができないことが挙げられていました。このため、RQのサプリメントの舞台として中心になっていたのは、別名「英雄戦争のゲットー」といわれるプラックスでした。実際、英雄戦争の初期の中心地となるサーターに関する情報は極めて少ないのです(実は「ジェナーテラブック」のみ?)。

一方、「HeroWars」では、基本システムの中に「ヒーロークエスト」に関するルールを包含しており、サプリメントの展開も「サーター王国」、「ルナー帝国」など英雄戦争の中心地から始まると予告されています。アーグラス皇子と共に、英雄としてサーター解放戦争で戦う……ということができるようになるわけです(有名NPC、ヒーローのステータスも公開されるとか)。

■HeroWars のシステム――“Rules Lite”

「HeroWars」の特徴としていわれるのは、まず「Rules Lite」(軽いシステム)ということです。これは必ずしもルールが少ないということではなく、コアとなる判定システムがシンプルだということです。「RQの戦闘は確かに楽しいけれど、一回の戦闘で3時間かかるのはなんとかして欲しい!」ということでしょう。

判定は基本的に1D20のみを使うものとなります。キャラクターは様々な「アビリティ」(Ability)を持っています。これはキャラクター作成時にプレイヤーが記述するキャラクターの説明に含まれる「キーワード」、またいわゆるアーキタイプのような「パッケージ」(「嵐の声」、「フマクトの剣士」、「ロカール派の魔道士」、「エルフの戦士」など)から決定されます(どうやって決定されるかまだ詳細は不明ですが)。

判定はキャラクターの「アビリティ」を対抗させ、双方の「アクションポイント」(Action Point)を削りあうことで行われます。アクションポイントは「アビリティ」の目標値から計算され、基本的に「20-目標値」となります。従って、「シルフとのコミュニケーション 4/16」(目標値 4、アクションポイント 16)のように表されることになります。1d20で目標値以上を出すことで成功となる(RQとは逆の上方ロールです!)ので、目標値が低いほどアビリティは高いことになります。

Glorantha Digest などを読む限り、この判定は、戦闘行為に対して戦闘行為で判定する必要はなく、たとえばフマクトの剣士の「剣による攻撃 8/12」に対し、ユールマルのトリックスターが「虚言で信じ込ませる 4/16」で判定を行うこともできるようです(ロールプレイが必要でしょうけどね)。

また、アビリティを極めるとそのアビリティに「マスタリィ」のルーンがつきます。これ→ mastery.gif (1013 バイト) ですね。これはRQで言う100%以上の技能にあたるのでしょう。その他、「プロットポイント」というヒーローポイント的に使えるものがあります。

今回、Wesley 氏が行っている HeroWars のキャンペーンのPC、フマクティの“双剣の”ローサーのキャラクターシート翻訳の許可をいただいたので、ご覧ください

RQ的な技能のほかにも、「冷静沈着」「無感情」などといった性格のようなもの、「頭の回転が速い」などといった曖昧なものが含まれているのが目に付きます。また「コンタクト」という項があるのは注目に値すると思います。(なお、魔術の項は、Greg Stafford 氏によって大幅にリライトされるそうなので、あまり参考にならないかもしれません)

「接近戦」がマスタリィとなり、15 mastery.gif (1013 バイト) 25 となっていますが、これがどういう判定になるかはよく分かりませんでした。このマスタリィを増やす、または極めていくことで、非常に強力な英雄まで再現することができるのだそうです。

「HeroWars」では、マスターは「ナレーター」(Narrator)、PCは「ヒーロー」(Hero)と呼ばれるそうです。HeroWars はかなり「神話的なフィクションを再現する」という方向のゲームシステムとなっているという予想がつきます。

また、「Wyrms Footprints」に掲載されている、Greg 氏のキャンペーン「Sartar High Council」(PCがサーター高等評議会のメンバーとなり、スターブロウの反乱に参加する)を見ると、氏はポリティカル・ソーシャル・ヒストリカルなシナリオを好むようですので、そのようなものが再現できるルールが用意される可能性は高いでしょう。感じとしては「RuneQuest」よりは、むしろ「Pendragon」と「Torg」を足したような雰囲気のゲームになるのではないでしょうか(まりおんの完全な想像ですが)。

■ハードコア・ファン層の協力

RQ/グローランサの展開は、事実上1993年頃から止まってしまっていたのですが、その活動停止期間中に情報提供を行ってきたのは、欧米(また日本の)ハードコアなファン層でした。おそらく「Tales of the Reaching Moon」誌のようなハイレベルのファンジンがなければグローランサの息の根は完全に止まっていたでしょう。TotRM誌以外にもセミプロ級のファンジンが年数冊のペースで発刊されており、そのレベルも概して高いものでした(※)。

※ただ「オフィシャル情報」ではないので、新情報よりも既存の情報の増幅といったものになりがちであったのは否めません。

「HeroWars」ではこのファン層の積極的な取り込みを行っており、ファンジンのコアとなっていたライターが多数起用される模様です。たとえば、TotRM のエディターであったDavid Hall 氏がオフィシャル・ホームページのウェブマスターをしていたり、Q&Aで回答していたりします。Issaries 社はグローランサの各地域について、多数の Expert を選出し、彼らに Greg Stafford のオフィシャル情報を与え、各ライターが設定を作り、それを Greg Stafford がチェックするという体制で各地のディテールアップを行っているようです。

また、たとえば、最近のGlorantha Digest では、Millitary の Expert が大規模戦闘に関するルールを執筆中だとの投稿がありました。現在のところ、HeroWars ではプラックスについて出版の予定はありませんが、これはファンがRQ時の情報をベースにサプリメントを作り出してしまうのではないかと言われています (^^; 。

■「HeroWars」の展開

すでに述べた通り、「HeroWars」は“英雄戦争”を扱います。

英雄戦争というと、ルナー帝国vs.サーター王国というイメージがありますが、英雄戦争はグローランサ全土で起こる大戦であり、従ってサプリメントも各地のものが発売される予定となっています。

まず、もっともなじみ深い中央ジェナーテラからの展開が始まります。最初に同時発売されるとアナウンスされている5冊は、おそらくは:

・「英雄戦争」:ルール本体。
・「グローランサ:英雄戦争への誘い」:グローランサ解説本。
・「嵐の反乱者たち:オーランシー・プレイヤーブック
・「女神よ護りたまえ:赤の女神プレイヤーブック
・「サーター:不屈の蛮人たち」(サーター王国解説本)

になるのではないかと考えられています。

サプリメントは1つの文化ごと5冊の本が出版されるそうです。プレイヤーブック、地域解説本3冊、神話と歴史についてのフィクションです。これを「クラスター」と呼びます。

「プレイヤーガイド」は、キャラクターの作成ルールと追加ルールなどについての解説です。解説本は、その文化の支配的な地域について、NPC/冒険/キャンペーン運営の指針/各集団の情報などを提供します(マスターブックのようなものでしょうか)。神話と歴史は、「グローランサ年代記」のようなものを想像すればよいでしょう。

各クラスターは、現在発表されているものだけで見ると、次のようになります(PGB:プレイヤーガイドブック、RB:地域解説本、MH:神話と歴史)。

●ルナー帝国(5冊):
「女神よ護りたまえ」(PGB)、「ダラ・ハッパ:群衆の中で」(RB)、「リンリディ:故郷への飛翔」(RB)、「ターシュ:解放された月」(RB)、「解放の女神」(MH)

●オーランシー(4冊):
「嵐の反乱者たち」(
PGB)、「サーター:不屈の蛮人たち」(RB)、「ケタエラ:新しい王、新たな解放」(RB)、「ハリケーンの反乱」(MH)

●フレストル派(3冊):
「魔道の騎士」(
PGB)、「ロスカルム:戦争王国」(RB)、「鋼鉄の美徳」(MH)

●クラロレラ(1冊):
「神と手をとらず」(
PGB)

●東方諸島(1冊):
「東方諸島:双鳳凰戦争」(
RB)

●船乗り(2冊):
「波濤と渦巻」(
PGB)、「マガスタの贄」(MH)

●トロウル(3冊):
「食わせろ!」(
PGB)、「ウズ:女神さまは腹ぺこだ!」(RB)、「ウズ・パック」(MH)

●エルフ(3冊):
「生命の葉」(
PGB)、「黙示の種子」(RB)、「緑の女神」(MH)

●ドワーフ(3冊):
「機械の中の神」(
PGB)、「鉄の人の夢」(RB)、「世界機械の子ら」(MH)

この他にも、最近の「Glorantha On Line」の「Myth of the Month」で出てくる神話を見ていると、セシュネラのロカール派、パマールテラのドラドなどのクラスターは出るでしょう。ペント、プラックスなどのクラスターも出るかもしれません。ラリオス、カルマニアなどの地域解説本が出る可能性は高いと思います。

さらにこの他に、ヒーロークエストを扱う3冊の本、グローランサ・エンサイクロペディア、英雄戦争を10年ごとに区切って英雄戦争の推移を解説する「キャンペーンブック」などが出版されるとされています。
また、シナリオも出版される他、Web 上でオフィシャル/ファンからの投稿のシナリオを公開していく予定のようです。

サプリメント以外では、小説(グレッグ氏の「ハルマストのサガ」や、Expert の書いたもの)、メタルフィギア、コンピューターゲーム(「King of Dragon Pass」)、Tシャツなどの発売がある(かもしれない)とのことです。

■発売時期は?

気になる発売時期ですが、現在のところ早くて秋、おそらく米国で99年の11月〜12月、その他の地域で12月〜1月になるのではないかと見られています。

イラストの発注は終わったようですが、発売の遅れることで定評のある Chaosium (の子会社)ですから予断は許しません(笑)。詳しい発売時期などがわかればこのホームページでも告知したいと思います。

ようやく姿を見せてきた「Hero Wars」ですが、RQとは違ったスケールでグローランサを見せてくれることでしょう(その分切り捨てられる部分――戦闘のディーテイルなど――はあるわけですが)。発売まであと半年(?)、期待して待つことにしましょう。

 

―― Here, coming of the Hero Age.


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