フマクトのひみつ(なぜか)日本国内ではどこにも売っていない Storm Tribe ですが、いろいろなカルトについての新設定がてんこもりで、実はかなり興味深い内容となっています。
今回は、 Storm Tribe に掲載されているカルトについて、ルーンクエスト時代のカルト・ライトアップと比べつつ、何が変わったのかをおおまかに解説したいと思います。
第一回は、プレイヤーの人気も高い、死と戦争の神フマクトさまです。
RQ日本語版(RQ第3版)では、オフィシャルのフマクトのフル・ライトアップはありませんでした。フマクトのフル・ライトアップはファンジン Tales of the Reaching Moon の第5号に掲載され、その完成度の高さから同誌は一躍「半オフィシャル・マガジン」と見なされるようになります。
日本でも、このライトアップはRPGマガジン連載「Rune Library」の記念すべき第一回目の翻訳として掲載されました。この号を大事に保存しているファンも多いことでしょう(私もですが (^^; )。
Storm Tribe のフマクト・ライトアップも、基本的にはこのRQ3フル・ライトアップをもとにしていると思われます。
フマクトの神話の前半部分は、特に変わりはありません。「グローランサ年代記」で語られた「邪悪な叔父たちによる成人の儀式」の話や、スパイクに赴いてカーガン・トールのもとで戦いを学んだ話などが追加されている程度です。
フマクトが殺したのは「定命の祖父」ではなくハーヴァン・ヴォール(Havan Vor)という神(?)になっていますが、これはヒーローウォーズで盛んに行われている「神知者の単一神話からの脱却」の一環だと思われます。
神話の後半、Storm Tribe のライトアップでは、フマクトは「死者」と「生者」を切り裂いて区別し、ハーヴァン・ヴォールに地界へ行く方法を教えた後、ユールマルによって世界にばらまかれた「古き死」(Old Death)(「死」のルーンのコピー?)を回収してまわったことになっています(このあたり、Tales の神話とかなり違ってます)。
そして死を回収していったフマクトに最後に立ちふさがった最大の相手が、彼から「死」を盗んだオーランスでした。フマクトはオーランスと戦って斬り殺し、地獄送りにしてしまいます。フマクトの神話では「こうしてフマクトはオーランスを光持ち帰りし者たちの探索行へ送り出したのだ」と伝えています(この話はカルトの外へ漏らすことを禁じられており、入信者以上にしか知らされないため一般の人には知られていないそうです)。
これが本当かどうかは分かりませんが、フマクトの信者にこの神話を再演する儀式を行わせることで、オーランス信者は「光持ち帰りし者たちの探索」のヒーロークエストで地獄への旅を「ショートカットできる」と書かれています。
基本ルールでも述べられているように、フマクトの神界での領土は嵐の領域の中の「剣の広間」にあります。ここから地界や「嵐の部族の時代」(嵐の時代)「ヴィングコットの時代」(小暗黒後期)、「混沌の時代」(大暗黒)、天界へ抜けることができます。
フマクトが「名誉」と「死」の神であり、そのほかにも「切り裂く者」「分離するもの」であることが語られています。Storm Tribe のライトアップはあくまでオーランス人の信仰するフマクトについて語っているので、Tales のように世界の他の地域でどう信仰されているかなどについての言及はありません(パマールテラまで傭兵しに行く部隊があるとかは書かれてますが…)。
なお、Unspoken Word 誌の最新刊「Thieves Arm」によれば、サプリメント「Imperial Lunar Handbook」ではカルマニアにおけるフマクト信仰が紹介されるそうです(でもたぶん、volume 3 ごろ...)
「ヒーローウォーズ」のカルトライトアップでは、各カルトの聖日が事細かに解説されています。フマクトの聖日は各季に1回、「死の週」の各季節のエレメントの日、というところは変わっていませんが、さらに聖祝期に1日聖日が追加されていま(第一週の土の日)。
聖日には「〜の日」といった名前がつけられており、関連した神話などが語られています。例えば、海の季の聖日は「波殺しの日」(Wavekiller Day)、火の季の聖日は「鍛冶の日」(Smithing Day)、大聖日は「死の日」(Death Day)……といった具合です。季節毎のイベントを演出しやすくなっているのではないでしょうか。
なお、Tales 版にあった「聖日には現在の所持金の10%を寺院に捧げなければならない(これが聖日前の馬鹿騒ぎの口実になっている)」という記述は、Storm Tribe 版では見あたらないようです。ちょっとおバカな設定で好きだったんですが……
入信者はいろいろな通過儀礼の後、「切り離し」(Severing)の儀式をおこなって、同族とのつながりを断ち切らねばならなくなりました。これはフマクトが風のルーンを捨ててオーランスの兄弟であることを止めた神話に由来しています。
この儀式により、フマクティは氏族の保護から切り離されます。このため彼らは危険だと考えられており、彼らは大多数のヒョルト人からは敬遠されているそうです(彼らが通ると子供は泣き出し、女は戸を閉め、農夫は目をそらす、とか書かれています (^^; )。なお、この儀式で失われた血縁との絆を回復する儀式も存在します。
基本ルールからの魔法キーワードの変更が一部あります。技能に Warband Tactics が加わり、Close Combat (Great Sword) が脱落しています(これは下位カルトで教えているということになったようです)
フマクトの帰依者は「剣」と呼ばれます。RQ版では「剣」になるにはなかなか大変でしたが、HWでは初期から選択可能です。帰依者がカルトを離れると、フマクトに呪われます(触れる剣が全て壊れる)。帰依者は《死》と《名誉》の神力の神技を使用することができます。
「剣」が学ぶことができる奥義は《死》(相手を即死させるもの)だけです。通常は下位カルトごとに奥義が違うのですが、フマクトの場合は特殊で奥義は《死》一つしかありません。
Diciple (使徒)というのは Storm Tribe で初出のものです。Diciple は「信仰する神を完全にエミュレートする」ことを目的としており、信者は時間の90%を神に捧げなければなりません。カルト毎に様々な名称で呼ばれ、例えば冒険者オーランスの Diciple は「風の王」と呼ばれます。
おわかりのとおり、これはRQでの「ルーン王」に相当するものです。ただし、Diciple はカルトの掟を重視するあまり、一般的社会と半ば相容れない存在となっています。生活時間の90%をも信仰に捧げているので、生業に就くといった一般的な生活はできないのです。グレッグ氏も「Diciple からは英雄戦争の英雄は生まれてこない」などと述べるなど、その位置づけはかなり異なっているようです。
Diciple の特典としては、全ての下位カルトの神技を自由に学べるようになる、Divine Companion (神友)を得ることができる、などがあります。ちなみにフマクトの Divine Companion は、「剣(まれにワタリガラスや狼)」です。
「死の剣」は地上に顕現した死の使いであり、老人などは彼に近づくだけで死んでしまうことがある、と書かれています(汗)。歴史的に有名な「死の剣」の例も載っていますが、「疫病が広まるのを防ぐために村々の人々を皆殺しにした」とか、「死を恐れる人々に怒り、3つの都市の人々を虐殺した」など、もはや人倫を超越してしまったといった感じがする人々ばかりです。フマクトの Diciple になるのは止めておいた方がいいようです……。
Thunder Rebels からの変更で、各カルトでは上位カルト(神様)が2つの神力を、下位カルトが1つの神力を提供し、あわせて3つの神力が提供されることになりました(基本ルールの魔術キーワードは、「デフォルト」の下位カルトを選択した場合のキーワードになっています)。
これにより、下位カルトによって同じ神でも使える魔術が少しずつ違うことになります。下位カルトの信者であることを強調し、たとえば「冒険者オーランスの信者で、下位カルトはヴァンガンスだ」という代わりに「ヴァンガンスの信者だ」ということもままあるようです。
Storm Tribe では、10の下位カルトが紹介されています。
・剣のヒュー Hu the Sword
フマクトの最も普遍的に知られている姿。「デフォルトの下位カルト」です。提供する神力は《剣戦闘》。
ちなみに、Hu はヒョルト語で「剣」を、-makt は「戦士」を表す言葉のようです。すると Humakt って「剣士」っていう意味にすぎないのですか…(まあ、現実世界の神様だってそういうそのまんまな名前な事も多いですが。アマテラスとか)・剣士ハイーア Hiia Swordman
主にグレイズランドの羽馬の女王の護衛に信仰されている下位カルト。提供する神力は《剛剣》。
・黒手のエフロダール Efrodar Blackhands
グバージ戦争の最中、フマクト信者の戦士団をはじめて組織した英雄。提供する神力は《戦闘指揮》。
・灰色犬のインドロダール Indrodar Greydog
リスメルダー部族の英雄で、部族の女王を“死人使い”ディレクティから解放するために戦った。提供する神力は《アンデッド破壊》。
・赤き息子インジニュー Inginew Redson
鍛冶の神グストブランの息子で、ユールマルに「死の剣」を盗まれた後、フマクトのために剣を鍛えた神。提供する神力は《剣呪鍛儀式》。
・戦士カーガン Kargan the Warrior
剣以外の戦闘を重視する異色派下位カルト。カーガン・トールと何か関係が? 提供する神力は《戦闘》。
・リ・ファンカン Li Phanquan
東方から来た英雄。ヴァンパイアの神ヴィーヴァモートに傷を負わせたと言われる。2つの神技を提供。
・マクラ・マン Makla Mann
アーカットに仕えた武将で、アーカットの裏切り後も忠誠を変えなかったため「不断の忠義」の代名詞となっている。提供する神力は《忠誠》。
・リグスダル Rigsdal
極星の神。フマクトのために夜番に立ち、ユールマルから死の剣を取り戻すのを助けた。提供する神力は《不寝番》。
・ヤン・スターセア Yan Starcere
曙の時代、さまざまな敵からの防衛を行った放浪の英雄。2つの神技を提供。
加護と制約には、それぞれ「ヒューの剣の加護」「マクラ・マンの加護」といった具合に名前が付けられています。加護と制約の内容にも一部変更(と追加)があるようです。
欄外には、いくつかコラムがあります。そのうちいくつかをかいつまんで解説します。
輝剣の死の光
フマクト信者が持つ剣は、常にフマクト信者にしか見えない光で輝いているそうです。この光は闇の中でまわりを見ることができるぐらいの強さとのこと。 フマクト信者には闇討ちは通用しにくい、ということでしょうか?
フマクトの傭兵団
フマクトの傭兵団は「千人のフマクティ」と呼ばれ、前述の英雄、黒手のエフロダールが初めて組織しました。とはいっても、実際には1000人ものフマクト信者がいたことは歴史上でもほとんどなく(グバージ戦争とドラゴンキル戦争直前のみ)、50人程度で組織されることもあるようです。傭兵団にはワイターの宿った戦旗を持つ旗持ち、武器を手入れする武具師、アローイン下位カルトの信者(魔法を使わないで治癒する)の癒し手が随行します。
いかがでしたでしょうか。
次回は「ヴィンガのひみつ」をお送りする予定です。お楽しみに。
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